大雪、洪水、豪雨、地震など、2018年は全国的に災害の多い年となった。言うまでもないことだが、災害は予期せぬ時にやってくる。普段から「BCP(事業継続計画)」を準備していない企業は、突然の状況に対応しきれず、事業活動が継続できないばかりか、事業を縮小したり、あるいは廃業に追い込まれたりする可能性もある。
「BCP」とは、企業が自然災害などの緊急事態に遭遇した場合に、資産の損害を最小限に抑えつつ、事業の継続や早期復旧を可能とするための方法・手段を取り決めた計画のこと。それは、企業が災害に遭っても生き抜くための手立てといえる。
事業活動を復旧・継続できれば、従業員の雇用を確保でき、それが地域経済の活力を守ることになる。
平常時のうちにBCPを周到に準備しておくことは、顧客はもちろん従業員、取引先関係者、地域住民からの信頼を獲得し、企業価値を向上させることにもつながるのだ。
中小企業庁の「中小企業BCP策定運用指針」によれば、中小企業のBCP策定において大切な点は「企業同士で助け合う」「緊急時であっても商取引上のモラルを守る」「地域を大切にする」「公的支援制度を活用する」の4つ。BCP発動の際はこれらを重視して活動することで、早期かつ正常な継続・復旧が可能となる。
災害発生時、事業継続についての意志決定をするためにも、被災した従業員への支援を行うためにも、欠かせないものは「情報」だ。
いざという時にはその手段が問題となる。災害時の情報共有手段として「災害用伝言ダイヤル」などがあるが、手順がやや複雑で、しかも普段使い慣れていないので、緊急時に正しく使えるかは不安が残る。
災害時にTwitterやFacebookなどのSNSが活躍することは誰もが知っているところだろう。やはり、日常使っているICTツールだからこそ、いざという時にも無理なく使いこなせるのだ。
企業がBCPを策定し、緊急時の情報共有手段を検討する際には、「日常使っているツール」「複雑な手順を要しないもの」といった基準で、ITツールを選ぶことが大切だといえる。
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2018年9月6日午前3時7分、北海道胆振(いぶり)地方中東部を震源とする地震が発生、各地で大きな揺れが観測された。道内全域で停電が起こり、産業・インフラ・家庭など各方面に影響が広がった。
北海道余市郡余市町にある社会福祉法人よいち福祉会は、BCP策定を進めている矢先に今回の地震に見舞われた。同法人の松井忍氏に、BCP策定の経緯や地震当日の様子を伺った。
社会福祉法人に対しては、火災や地震などの災害が発生した際の迅速な避難手順など、災害対策計画を策定することが義務づけられており、また定期的に自治体に報告する必要もあります。当法人では担当者がBCPの策定をちょうど進めているところで、もうすぐでき上がるといったタイミングで今回の地震が起こりました。
高齢者福祉施設では、利用者の生活を支援するサービスを提供しています。食料の備蓄や医療機器などを使うための電源の確保といった、利用者の安全・生命の確保を重視を最優先にしつつ、サービス継続のためのさまざまな計画をBCP担当者が中心となって作成しています。
実は、今回の地震の少し前の8月頃に台風が来て、朝方に停電が起きたことがありました。停電自体は1時間程度で収まりましたが、念のため非常用発電機を確認したところ、メンテナンスが悪かったのか起動できませんでした。そこで、非常用発電機のメンテナンスと燃料の確保を担当者が手配し、完了した矢先に今回の地震が起こったのです。
午前3時過ぎに地震がありましたが、余市町ではそれほど揺れませんでした。その約20分後に停電が起こり、施設内は、非常灯のみ点灯した状態になりました。
施設には、非常事態という事で夜明け前にもかかわらず車通勤の職員が次々と出勤してきます。ですが、停電のため通常業務で利用しているPCやグループウェアなどは使うことができません。スマートフォンは問題なく使用できる状況でした。
非常時は平時以上に情報共有が重要になってきます。非常用発電機をすぐに稼働できる状態で用意していたため、午前4時頃には、最低限のネットワーク機器、電話交換機、そして、スマートフォンで利用できるビジネスチャット「ChatLuck(チャットラック)」のサーバーを起動することができました。
「情報共有が可能なツールとして唯一「ChatLuck」が使えるようになったのは本当にラッキーでした。」
現場の主要な職員はBYOD(私物端末の業務利用)でスマートフォンを持っていましたから唯一稼働していたChatLuck(チャットラック)を使って職員間の情報共有を行い、安否確認をスムーズに行うことができました。 情報収集については、TwitterやNHK防災アプリ、AbemaTVアプリ、車のラジオやテレビなどを使って各自が行っていました。
スマートフォンでは電話も使えたのですが、当日夕方には発信規制でつながりづらくなった時間帯もありました。そんな時もChatLuckの通話機能を使って連絡を取り合うことができました。
ChatLuckでは、被害状況の確認や利用者への食事提供の準備、水や食料品の確保、ガソリンの販売状況や給油制限などの情報を、一つのルームで共有しました。
「(法人内で)水が出る施設はここ」「イオンは停電でシャッターが開かないので屋外で営業中」「ケーズデンキは行列で入場制限がかかっています」といった情報がルームで飛び交っていました。停電は当日の深夜0時頃に復旧し、混乱も徐々に落ち着いていきました。
ChatLuckは、職員の日常のコミュニケーションツールとして導入していました。今回災害に遭って、普段から業務で利用しているツールだからこそ、緊急時でも戸惑うことなく使えるということがよくわかりました。
今回は「運営委員会」というルームですべての情報をやり取りしたのですが、投稿されたメッセージが一箇所にまとまっていて、時系列に並んでいる点が便利だと感じました。常に最新の情報を確認できますし、さかのぼって経緯を把握することもできます。情報の全体像が見えるために、施設長や各管理者が意志決定をするにもやりやすかったようです。
最も利便性が高いと感じているのは、画像や動画が添付できる点です。今回の地震の際は、インフラ復旧状況を記入したホワイトボードを、スマホのカメラで撮影し、ChatLuckに添付して共有しました。文字を入力することなく簡単に情報共有できるので、緊急時には非常に助かります。普段の業務においても、たとえば夜間勤務の職員が看護師と連絡を取る際に、画像や動画で確認しあうといった使い方をしています。
発電機で数時間の電力を確保できましたが、容量が足りないと実感したので、何台か増やすことを検討しています。
ChatLuckに関しては、今回は日常業務で使っているルームの1つに主要な職員のみを参加させました。もし全職員を参加させるなら、災害時専用のルームを作っておくべきだと考えます。
また、現在ChatLuckをオンプレミスで運用していますが、電力が完全にストップした時のことも想定して、クラウドで運用することも検討しています。
そして、クラウド移行が完了した際には、BCPにICTの活用を明記するようにしたいと考えています。
ChatLuckはビジネス用途に特化したチャットツールです。PCやスマートフォンを使って、会話をするような手軽さでメッセージやファイルのやり取りができます。
メールによる連絡・情報共有の非効率を解消し、日常業務を効率化するだけでなく、災害時の緊急連絡手段としての活用も可能です。
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